King Crimson

Larks' Tongues In Aspic


今週は特にごっついのを紹介しようと思う。2度目の登場となるキングクリムゾンから、「太陽と戦慄」だ。
まずはこの意味深なタイトルの話からしよう。Larks’ Tonguesとは「ひばりの舌」、Aspicとは「コブラ」と「どろどろしたもの」という訳があった様な覚えがある。つまり全体だと「コブラの中のひばりの舌」もしくは「どろどろしたものの中のひばりの舌」という訳になるがコブラ訳の方がすっきりする。ひばりに対応するのがジャケットの太陽の絵で、コブラに対応するのが太陽と反対のものとしての月となるのだろう。ひばりやジャケットの太陽から温かみを持った平和なものとして「太陽」という言葉が選ばれ、それとは対象的にコブラからは恐ろしいもの、戦争をもたらすものという印象から「戦慄」という訳が当てられたのではないだろうか。これは勝手な解釈で、実際にどういう意図があったのかは解らない。平和・戦争をテーマとしている考え方や男と女をテーマとしているという解釈もあるらしい。どれにせよ、何か強と弱で対になっている2つの物がテーマなのではないかと思う。
前に紹介したデビュー作「クリムゾンキングの宮殿」(69年)も凄まじい作品だったがメンバーチェンジを繰り返して73年に生まれ変わったクリムゾンが出したこの太陽と戦慄はデビュー作を遥かに上回る出来だ。
クリムゾンキングの宮殿がクリムゾンを好きになったアルバムとするなら、太陽と戦慄はこのバンドに一生付いて行こうと決心したアルバムだ。この作品の良さがわからんと言おうものならロックを聴くのをやめて頂いて結構だ。ジャケットに燦々と輝く太陽はロックの頂点で輝いているようにも思える。構成美ばかりにとらわれた甘ったるい現代の二番、三番煎じロックばかり聞いている若い奴らよ、とにかく、聴け。と言いたい作品だ。
1曲目、タイトルナンバーである「Larks' Tongues in Aspic Pt.1」。私の「プログレ3大衝撃」の一つを担った曲だ。この曲のジャンルはクリムゾン≠ニいうしかない。恐らく一般的に有名で人気のある音楽だけを聴いているような人にとってはこの曲の良さがどうのこうの言う前に、まともな音楽に聴こえないかもしれないというぐらいぶっ飛んでいて、実験的などという言葉の範疇に収まりきれない。
砂漠に降り注ぐ太陽を連想させるようなどこか心地よいストリング音で静かに幕を明け、次第にヴァイオリンが奇数拍子でまさに「戦慄」 を運んでくるように登場する。そしてロバートフリップ(guitar)の得意技、中世のヨーロッパで「魔のスケール」と呼ばれたリフが暴れまくる。 曲の頭では音量をあげないと聴こえないぐらいだった静けさから一気に音が爆発して緊張感が急激に高まる。 リズムセクションも無表情にこれに絡み合う。パーカッションに新たに一人迎えたのもこのアルバムの大きな特徴だ。 その後はもう言葉では説明しきれない。各パート、テンションが高いのに、ものすごく冷たく、常に背筋がゾクゾクする。 だが曲は美しく、かっこよすぎる。聴いていて心地よいのか悪いのかも よくわからないのだが何度でも聴いてしまうのは、演奏している彼ら自身が本当に音楽が好きで、周りの反応など二の次にして 演奏することを楽しんでいるからではないだろうか。

2曲目で1曲目の緊張が一旦解かれるようなゆったりとしたクラシカルな小休止的な曲が入り、3,4曲目も 良い曲ながらも、目立ちすぎてアルバム全体の流れを乱すなどということのない、しかもいかにもクリムゾン的な曲が続く。 目立たないが、どれも傑作だ。
そして4曲目Talking Drum=A5曲目Larks' Tongues in Aspic Pt.2≠ヨとつながるわけだがこの2曲はライブでも必ずと言っていいほど連続して演奏され、 その後のクリムゾンのライブで2曲一組で定番曲となったものだ。発表から20年間に渡りライブで演奏される曲となったわけだが 楽器、機材の変更はされているものの、全く古さを感じさせることなく、むしろ現代に於いても「プログレッシヴ」と 言える曲なので73年の発表時の衝撃は計り知れない。曲題が同じPt.1とはまた全然違った雰囲気で、Pt.2は攻撃的、ハイテンションが 終始続く。この曲は一般的なロックとしての視点から見てもかなりかっこいい。ライブだと更にかっこいいので是非ライブの演奏も 聴いて欲しい。個人的にはPt.1のライブ演奏が聴きたくてたまらないのだが、発表直後あたりに数回演奏した程度で ほとんどライブ音源が無いのが非常に残念だ。いくつかライブ音源を見つけたが、どれも非常に音が悪い。予想に過ぎないが、パーカッショニストのジェイミー・ムーアがこのアルバム発表直後に 仏教に目覚めて出家してしまったのと、特にPt.1は彼の役割が大きい曲だったのが原因なのだう。

さて、説明はこのぐらいにして、今回からこのサイトにゲスト評論家を迎えることとなった。
サイトの目的のところにも書いたが、ここはプログレのことをよく知らない人にも聞いて欲しいという願いを込めて作ったので実際にそういう人物がプログレを聴いた感想も気になる。このサイトを読んだプログレに詳しくない人も、プログレをよく聴いている人からのCD紹介や感想だけでは「無知な人が聞いても同じように感じるのか?」という疑問もあるだろう。そこで知り合いのM氏に頼んだところ、快く了解してくれたのでこういった運びとなった。
M氏が普段よく聴いている音楽は80年代の洋楽ポップが中心だが、無知ながらも様々なタイプの曲に興味がある様子でプログレの話も 興味を持って聞いてくれる人だ。このサイトも毎週読んでくれている友達だったのでゲスト評論家として選ばさせていただいた。

ということで早速今回のM氏の感想。(一部省略)
「CD一枚を丸ごと聴くべきで 一曲だけでは理解できないような・・そして繰り返し聴くと段々、いいかも♪ って思えるような曲だなぁって思った。一人で、朝家族が出かけてから出勤する前に聴くことにしました。一人きりでじっくり聴くと、これは車で聴くものでもなく、大勢で聴くものでもなく、一人で聴きたいような気分になり、急にコーヒーが飲みたくなって飲みながらのんびり聴いてました。一曲目(太陽と戦慄パート1)と3曲目(イグザイルズ)が好きかな。夜お酒を飲みながら聴くのもいいかも♪」

Mさんありがとう。繰り返し聴くと味が出る。その通りですね。私は恐らく一生かけて聴くと思います。本当にヘヴィな曲なので大勢で聴いたり 運転中に聴くのは確かに向いていないかも知れませんね。まったく「ノリ」を無視した曲ばかりです。

M氏はまだほとんどプログレというものを真面目に聞いたことがないので全体の感覚的な感想が多いが、逆に私はバンドの背景や技術的な面から曲を聴いてしまうためこういった感想が書けないので、無知な人へ広めようというサイトの趣旨からすると大変ありがたい感想だ。 今後も協力してもらってCD紹介を充実させていくつもりだ。

  
必聴度:∞


D a t a
Bill Bruford - Drums
John Wetton - Bass, Vocals
David Cross - Violin, Keyboards, Viola, Mellotron
Robert Fripp - Guitar, Keyboards, Mellotron, Remastering, Devices
Jamie Muir - Percussion
1. Larks' Tongues in Aspic, Pt. I (太陽と戦慄パート1) - 13:36
2. Book of Saturday (土曜日の本) - 2:56
3. Exiles (イグザイルズ) - 7:42
4. Easy Money (イージーマネー) - 7:53
5. The Talking Drum (トーキングドラム) - 7:26
6. Larks' Tongues in Aspic, Pt. II (太陽と戦慄パート2) - 7:09
1973年、イギリス